『金子光晴 旅の形象——アジア・ヨーロッパ放浪の画集』
発行年 | 1995年(168頁) |
出版社 | 平凡社 |
著者 | 今橋映子(単著) |
詩人で作家として知られる金子光晴が、旅絵師でもあったことは存外知られていない。
著者は1990年代、ベルギーで長く護られてきた金子の水彩画の数々を再発見した。金子は1930年代にやむにやまれぬ事情から、アジア・ヨーロッパを放浪し、実は旅で描いた絵によって生計を立てていた。なぜベルギーにこれほどの水彩画が大事に保存されていたのか
——どん底の生活で世界戦争の現実と、自分たち夫婦の感情の機微を見つめ、文明や都市の裏面を怜悧に観察する詩人・光晴の眼もそこには存在する。
本書は30点以上の水彩画をカラーで初公開。旅程を辿りながら、一点一点に光晴のテクストを添え、それについて語る。愛情と金銭に飢えた詩人の筆の確かさ、感性のみずみずしさが新たな感動を誘うだろう。
目次
旅の始めに
一章 アジア
(最初の逃げ場所/上海ゴロ/竹径通幽/江南水ぬるむ日/爪哇―崩れゆく大国/新嘉坡―混血の雑踏/マレー蘭印一人旅/大寂寥の世界/アジアからパリへ)
二章 パリ
(パリ再び/徒花の都/シャンジュ・シュバリエ/パリの日本人たち/伯爵夫人モニチ/芸術家という身振り/死の影/1930年代パリ/ねむれ巴里/心象の街景)
三章 幻の日本
(帰れない場所/光晴の画業)
四章 ベルギー
(自己滅形のかたち/〈旅〉の形象/フランドル遊記/愛の攻防/ベルギー・享楽と厭世/金碧燦爛の世界/海 あるいは詩と死)
五章 ルパージュ家へのオマージュ
(十年という歳月/異郷の友情/再び会い難い友へ)
旅の終わりに
解説/金子光晴年譜/読書案内