『ブラッサイ パリの越境者』

発行年2007年(407頁)
出版社白水社
著者今橋映子(単著)

 ブラッサイ(本名ジュラ・ハラース、1899-1984)は、フランスで活躍した写真家。

 一言で言うなら、ブラッサイは越境者である——生地トランシルヴァニア(現ルーマニア、旧ハンガリー領)からパリへという地域的亡命者。上流社会からどん底まで、社会的に渉猟するジャーナリスト。そして写真のみならず、彫刻/デッサン/版画/映画/バレエ/文学——と、驚くほど他領域を跨いで創作したアーティスト。その周囲には、ピカソやプレヴェール、ヘンリー・ミラーやジャコメッティなど、多彩なアーティストの友人たちが彩った。しかし、絶えず越境しとどまることを知らない、あるいは自己規定を拒もうとするブラッサイの中には、むしろ相変わらない「原理」が存在している——それは何だろうか。

 精選した20枚のイマージュから、彼の原理とも言うべき二つの「想像力」を解き明かしていく批評的試み。世界中のブラッサイ研究の動向を一挙に収めた点では、学術の先端も目指した一冊。

目次

プロローグ

乳母との肖像

イマージュ1

シャモニーのブラッサイ

イマージュ2

アルムノンヴィル館

イマージュ3

スージーの館

イマージュ4

ある男が路上で死んだ

イマージュ5

巧まざる彫刻

イマージュ6

公衆便所

イマージュ7

コンシエルジュ

イマージュ8

ローマ駅

イマージュ9

デッサン―裸婦

イマージュ10

ピカソの彫刻「死者の頭」

イマージュ11

彫刻―うずくまる女

イマージュ12

聖アントワーヌの誘惑

イマージュ13

割れた鏡

イマージュ14

バレエ・ランデヴー

イマージュ15

ジャコメッティ1948年

イマージュ16

太陽王

イマージュ17

落書きの宇宙

イマージュ18

トランスミュタシオン

エピローグ

モンマルトルの坂を降りる犬

あとがき

ブラッサイ年譜/ブラッサイ研究・批評的書誌(欧文/日本語)